保健教室 




 思春期を迎える子どもたちを取り巻く環境

 カンボジアでは、思春期を迎える子どもたちが自分のからだや心の変化を学ぶ機会は、
 家庭でも学校でも、ほとんどありません。
 大部分の大人たちにとって、これらを口にすることは恥ずべきことであり、また自分自身も
 学ぶ機会がなかったため、教えることができないのです。

 子どもたちは、身近にいる大人たちの行動から様々な事を学び取ろうとします。
 しかし、知識の少ない大人たちから得られるものは少なく、その結果、自分の疑問や
 不安に対する答えを見つけられず、こんなものなのだと諦めてしまうのです。

 学校では、手洗い、うがい、爪きり、シャワー、シャンプー、洗濯等、基本的な衛生習慣の
 指導は行いますが、授業に保健科目はありません。
 小学校6年生から加わる理科・社会の教科書に、からだの仕組み、病気、家族について
 書かれているものの、あくまでも理科、社会の範囲です。
 また、教える側にも問題があります。
 担任が女性教師ならば、自分の経験を加味しながら話すこともできますが、知識不足は
 否めません。その上、教室には男児もいますから、話すことに抵抗があります。
 そして担任が男性教師ならば、女性のからだ、健康についての知識が殆どありません。




 思春期の女の子に対する保健教室
 * 第1回目 『保健衛生と月経のしくみ』


 2002年 2月14日、バッタンバン州の孤児院「ノリアの平和の子どもたち」にて、思春期の
 女の子14名を対象に、保健教室を行いました。
 初回は教材もなく、"女性のからだと生理"、"からだの清潔"を簡潔に口頭で説明し、
 その後、参加者の質問に答えるという形式で、1時間半程度のごく簡単な内容でした。
 保健教室を行うにあたり心配だったのは、このような内容を話題にするのは恥ずべきこと
 と考える傾向が強く、子どもたちから質問が出ないのではないかということでした。
 しかし、初めこそ恥ずかしそうに話を聞いていた子どもたちが、質疑応答になると驚くほど
 活発に、疑問や不安を話し出し、正しい保健教育(性教育)を必要としていることを、強く
 感じました。
 孤児院という特殊な環境の中、まして常勤の女性スタッフがいない状況で、女の子たちが
 自身の成長を正しく受けとめ、健全な発育を促すために、継続的なサポートの必要性を
 痛感した1回目の保健教室でした。




 * 第2回目 『女性のからだ・月経のしくみ』

 2002年12月29日、バッタンバン州の孤児院「ノリアの平和の子どもたち」にて、12才〜18才
 の女の子18名を対象に、保健教室を行いました。
 今回は、翻訳絵本「女の子」を教材に、午前・午後それぞれ約2時間半を使って行いました。
 当初、日本で用意した教材はカラフルで興味をひきつけやすい反面、リアルなため刺激が
 強すぎるのではないかと心配でした。
 しかし、初めての"目で見る教材"に子どもたちは真剣に見入り、午前中約2時間半という
 長い時間にもかかわらず、飽きることなく話しを聞いていました。
 また、途中、発言する子どもたちも多くいました。
 午後からは、午前の締めくくりに書いてもらったアンケート ―― 話の中で解からなかった
 こと、疑問、日常での不安等 ―― に答えた後、必需品を各自に支給しました。




 今後の課題

 当会では、今後も当孤児院での保健教室を継続するとともに、これをモデルケースとし、
 今後1〜2年の間で、村々でも行えるよう準備を進めます。
 村々での対象は思春期の女の子に限定せず、成人女性に対しても実施する予定です。
 2002年12月27日の訪問では、孤児院での保健教室以外に、バッタンバン州アイプノム郡
 にて、14歳以上の女性を対象に生理用品支給の為の村民ミーティングを行ってきました。
 そして、現地カウンターパートによって12月末までに285名に対し支給が完了いたしました。
 この村民ミーティングでは、思春期の子どもたちの発言こそ少なかったものの、
 若いカップルからは、出産間隔をあける方法(特に女性)、望まない妊娠を避ける方法
 (特に男性)を教えてほしいと言う声が多く聞かれました。


 女性の自立のためには、女性が健康である事が重要です。
 自分のからだの変化を正しく知り、からだの不思議さ、大切さを理解することは、
 命の大切さに気付くことへと繋がります。
 それは、他の人にとっても同じことなのだと気付き、人権に対する意識の向上へとも
 繋がるのです。
 また、保健教育は、女性だけに行えば良いというものではありません。
 対象を男性にも広げることにより、男女双方がお互いのからだやその変化を正しく理解し、
 お互いの健康を考えられるようになります。
 農村地域で根強く残る男尊女卑の意識を変えていくためにも、男性に対する保健教育は、
 今後の課題のひとつです。




 ―― 参考 ――

 バッタンバン州の孤児院「ノリアの平和の子どもたち」
 * 女の子25名、男の子33名、計58名(2002年12月末現在)
   親のいない子ども、貧困で親が育てられない子どもが入所
 * 卒所後、女の子たちが自立できるよう、裁縫学校が併設されている
 * 当会では2000年5月より、食用米・生活用品支援と絵本の読み聞かせを行っている。




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